宮崎日日新聞掲載コラム 「塗り替えて 装い新たに」


第1回 「塗装とは」


 念願のマイホーム。誰もが、たくさんの希望をもって手に入れたことでしょう。思いの詰まった大事な家だからこそ、長く大切に住みたいものですよね。私の家のイメージは、家族を暖かく包み込み、そこに住む人の生活を見守る、まるで母の愛のような存在。時には台風や大雨などにも立ち向かい、私たちを守ってくれる父のようなたくましい存在でもあります。

 そんな家は私たちとともに年月を重ねながら生きているものだと感じます。そして、私たちが具合が悪いときに医者にかかるのと同じように、家に異常があるときにはメンテナンスが必要になります。ただ、家は自ら声を発することができません。だからこそ私たち住む人が気づいてあげる必要があります。メンテナンスというと「難しそう」「どうすればいいのかよく分からない」という声を聞きます。そのため、業者にすべて任せきりという方も多いでしょう。理想は業者任せでなく、家を理解してあげながら、必要な処置を行いたいものです。

 私は主に住宅塗装を手がけています。塗装は家のメンテナンスに欠かせないものの一つに挙げられます。塗装の目的は大きく分けて二つ。それは「保護」と「美観」です。塗装はほかのメンテナンスに比べて比較的安価に、総合的に行うことができるため、よく利用されます。その割には、あまり理解されていないのが現実です。これから「住宅塗装のいろは」を皆さんと一緒に考えたいと思います。

 

一級建築塗装技能士 日高圭介

2015.9 加筆・修正


第2回 「風の流れ」

 住宅塗装という仕事柄、今まで数多くの住宅を見て きました。すると不思議なことに気づきました。家の造りが違えば、経年劣化に差が出てくるのは皆さんも何となく分かると思います。しかし、築年数も、建て た業者も、使用材料も、家の形態もほぼ同じ家にも関わらず、経年劣化に差が出てきている現実があるのです。

 現場にいると、長くもつ家とそ うでない家にはある一つの共通点が見えてきます。それは「風」です。傷みの少ない家の周囲はすっきりと片付いていて、風の流れを感じられます。一方、風の 流れの悪い場所はいつも湿度が高くカビ、コケ、藻が発生します。家もきっと気持ち悪いと感じていることでしょう。また過剰な湿度は家の傷みを早く進めま す。特に外装に関して言えば、塗装面の劣化と家の劣化とは密接な関係があります。

 皆さんの家の外周をぐるっと見渡してください。意外と風 の通り道を邪魔しているのが植栽です。特に家を取り囲むような植栽は、外からの目線を遮ると同時に風の流れも遮ります。風の流れを意識した植栽の伐採がお 勧めです。特に屋根に樹木がかかるようであれば要注意。雨樋に落ち葉が詰まり、水の流れを妨げる原因にもなります。また植栽は大きくなるので、将来を見据 えた植え方が必要です。

 家を思いやる気持ちをもつと、見えてくる部分が出てきます。そしてその気持ちに家は応えてくれるものです。

 

一級建築塗装技能士 日高圭介

2017.7 加筆・修正


第3回 「塗り替え時期 上」

 メンテナンスには大きく分けて二つあります。一つ目は悪くなってからのメンテナンス。人でいうと具合が悪くて病院にかかるケースです。二つ目は健康診断や車検といった、定期的に行うメンテナンスです。

 住宅も私たちの体と同じように年月を経るにつれ劣化が進みます。そのまま放置すると、職人の手も費用もかかります。早期発見・早期治療がいいのは、人の体も家も同じなのです。ただ、住宅は調子が悪くても自分で声を出す事ができないので、住む人の判断がとても大切になってきます。そのためにも必要なのが、塗り替え時期をきちんと把握することです。

 基本的に、塗り替え時期を見極める初期段階として、つやがなくなります。塗装面を触ると白っぽい粉が手に付きます。これを「チョーキング」と言います。原因は主に紫外線など通常の自然条件下で起こる現象です。家を保護している塗膜が働きを失う最中なので、年月と共に、確実に家自体が傷んできます。

 次の段階は塗膜がなくなり、素地が露出している状態。紫外線や雨水などに直接晒されているので、傷みによる劣化が急激に進みます。そのまま放置すると家自体に水が侵入したり、腐ったりして、本体そのものをやり替えるなど、施工も大掛かりになり、予想外の出費に繋がります。そうならないためにも家をよく見て、家の声に耳を傾ける事も大事だと思います。

 

宮崎市・一級建築塗装技能士 日高圭介

2017.7.7 加筆・修正


第4回 「塗り替え時期 中」

 前回は塗装の劣化による塗り替え時期の見極め方の話でした。

 それ以外に家の劣化を見る要所として「コーキング」の劣化、ひび割れなどが挙げられます。コーキングとは、壁と壁のつなぎ目やドアの枠、窓枠の外周などにじゅうてんされているものです。触るとゴムのような弾力のある部分です。これが建物の隙間を埋めてくれることにより、建物の機密性・防水性を維持してくれます。これもやはり経年劣化により、弾力がなくなり、ボロボロになって剥がれたりします。

 住宅は新築時に水が侵入しにくいように造られていますが、コーキングの劣化による外壁の隙間やひび割れがある場合は対処が必要です。方法としては、劣化した部分の打ち替えなどがあります。住宅の場合、コーキング部分の劣化と塗装面の劣化時期が重なる場合が多いので、塗り替え時期の目安として、注目してみるとよいでしょう。

 簡単な補修などを自分でする際には、ホームセンターで手に入れることができます。コーキング、コーキングがん、ボロ布、マスキングテープなど、千円程度から揃えられます。注意する点として、コーキングの中には塗料をはじくものがあります。後に塗装が必要になるかもしれないので、塗料がのるものを選ぶとよいでしょう。

 塗り替え時期を把握するのは難しいと思われがちですが、以上のことを頭に入れておくと、適切な塗り替え時期を判断することができると思います。

 

宮崎市・一級建築塗装技能士 日高圭介

2017.7  加筆・修正

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